経年で美しくなる素材を選ぶ、
ということ

新品のときが一番きれいで、あとは古びていくだけ。住まいの素材を、そう考えていないでしょうか。けれど、本当に良い素材は、時とともに味わいを増していきます。住み継ぐ住まいに欠かせないのは、経年で美しくなる素材を選ぶこと。この記事では、百年もたせる住まいづくりの素材選びについて、素材研究室の視点でお伝えします。
「経年劣化」ではなく「経年美化」
多くの工業製品は、時間が経つほど劣化していきます。一方、自然素材の多くは、使い込むほどに深みや艶を増し、その家だけの表情を育てていきます。これを経年美化と呼びます。住み継ぐ住まいにとって、素材が時間を味方につけられるかどうかは、とても大切な視点です。
住まいに使われる素材は、毎日目に触れ、手に触れるものです。だからこそ、年月とともにどう変化していくのかは、暮らしの満足度を大きく左右します。新品の美しさだけでなく、十年後、二十年後の姿まで想像して選ぶことが大切です。
時とともに育つ、代表的な素材
無垢材
一本の木から切り出した無垢材は、年月とともに色合いが深まり、艶を帯びていきます。傷さえも風合いの一部になり、家族の時間が刻まれていきます。
塗り壁
漆喰や珪藻土などの塗り壁は、調湿性に優れ、空気を穏やかに保ちます。職人の手仕事による表情は、均質な工業製品にはない温かみを持ちます。
真鍮など金属
真鍮の取っ手や金物は、使うほどに鈍く落ち着いた色へと変化します。その変化こそが、住まいに風格を与えていきます。
これらの自然素材に共通するのは、均質な工業製品にはない、ゆらぎや表情を持っていることです。その個性こそが、住まいに深みと温かみを与え、住むほどに愛着を育てていきます。
手入れをしながら、長く付き合う
経年で美しくなる素材は、まったく手をかけなくてよいわけではありません。無垢材には時折のオイル塗布、金属には乾拭き。そうした小さな手入れを重ねることが、素材との付き合いを深め、住まいへの愛着を育てます。手をかけることそのものが、住み継ぐ暮らしの楽しみのひとつです。
手をかけることを負担に感じる方もいるかもしれません。けれど、住まいに手をかける時間は、暮らしを丁寧に見つめ直す時間でもあります。住み継ぐ暮らしとは、住まいと共に時を重ねていくことなのです。
素材を生かす、住まいの設計
経年で美しくなる素材は、ただ採用すればよいというものではありません。その素材の良さを引き出すには、光の入り方や、ほかの素材との組み合わせを考えた設計が欠かせません。たとえば無垢材の床は、窓からの自然光が当たることで、その表情がいっそう豊かに見えます。
また、自然素材は調湿性や肌触りといった機能面でも、暮らしの心地よさに貢献します。塗り壁が室内の湿度を穏やかに保ち、無垢材が素足に心地よい。こうした日々の小さな快適さが、長く住み継ぐ住まいの満足度を支えます。
素材選びは、デザインの問題であると同時に、暮らしの質の問題でもあります。住まい手の暮らし方をうかがいながら、その家にふさわしい素材を選び、設計に生かしていくことが、わたしたちの役割です。
素材を選ぶ、ということ
どんな素材を選ぶかは、住まいを何年もたせたいか、という問いと深くつながっています。素材研究室では、十年後、二十年後にいっそう美しくなる素材と、その手入れの方法を集めています。次の世代まで住み継げる住まいを、素材から考えていきます。
よくあるご質問
自然素材は手入れが大変ではないですか?
特別に難しい手入れは必要ありません。無垢材なら時折のオイル塗布、金属なら乾拭き程度です。その手間こそが住まいへの愛着を育て、住み継ぐ楽しみにつながります。
自然素材は費用が高くなりますか?
工業製品より単価が高い素材もありますが、長く使えて経年で味わいを増すため、住み継ぐ視点では価値の高い選択です。ご予算に応じた素材のご提案も可能です。
マンションでも自然素材は使えますか?
使えます。無垢材のフローリングや塗り壁などは、マンションのリノベーションでも採用できます。ただし管理規約による制約がある場合があるため、事前に確認します。
まとめ ― 住み継ぐ、という選択
経年で美しくなる素材を選ぶことは、百年もたせる住まいづくりの要です。無垢材、塗り壁、真鍮。時とともに味わいを増す自然素材は、家族の時間を刻みながら、住まいに風格を与えていきます。手入れをしながら長く付き合う。それが、住み継ぐ暮らしの豊かさです。
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